ハンターゲーム




この腕の中に欲しいのは君だけなんだ<Fin>



心なしか、目がキラリと光った気もする・・・まるで獲物を見つけた豹か何かみたいに・・・。

次の瞬間!

一気にギイがこっちへ、ぼくへ向かって一直線に走り出す。

当然、ぼくは全速力で逃げ出したのだが。

俊足のギイ。逃げ切るなんて至難の業だ。

ましてや、つい先程、全力疾走で逃げてきたばかりのぼくに勝ち目なんて全くもってあるはずもなく。

ザッザッザッザ!

足音が背後に迫る。ギイ、もう、直ぐ後ろまで来てる。

「つ〜かまえたっ♪」

嬉しそうな声と共に背後から勢いよく抱き締められる。

「ちょっ、なに?なんで、ギイ…ぜいぜい、はぁはぁ…」

ぎゅうっっっ。

更に力を込めて抱きすくめて、頬に頬を摺り寄せる。

「ちょっと、や、やめっ、ギイ」

息はまだ整わないっていうのに、心臓だってまだバクバクしてるのに、ますます呼吸も鼓動も速くなる。

しばらく、その状態でじっとしてたら、ようやく息も整ってきた。

ホッと息をつくと、耳元にすこし低めの甘い声。

「託生、もう、逃がさないからな」

「わ、わかってるってば。捕獲されたら、逃げられないんだろ。素直に檻に入りに行かなきゃ

なんないんだろ」

「ちがう」

「え?ちがうの?」

ぼくの知らない内にルール変更でもあったのだろうか?

「じゃなくて。ゲームのハンターとしてじゃなくてさ。葉山託生だけを狙う専属のハンターとして、だよ」

「ぼく、獲物?」

なんだか、それって。激しく何かが違う気がするんだけど。

「そ。極上の」

そういうと、嬉しそうにそれは綺麗に微笑むから、反論する気が失せてしまった。

と、くるりと身体を反転させられて正面から抱きすくめられる。

「ちょっと、ギイ。ダメだってば。誰かに見られたらっ…ん…」

優しい口付けで唇を塞がれる。

「大丈夫。ここらにいんの、オレとお前だけ」

え?でも。さっきまでは、結構沢山の人が・・・。

ぼくと章三のやりとりを陰から覗き見てた、あまり見慣れない顔、顔、顔・・・。

そして、確かにざわりと揺れた空気とその後のなんともいえない朗らかな雰囲気。

「また」

「え?」

「お前は、オレと一緒にいるってのに、また旅立ってただろ」

「あ、ごめん」

「いいけどな。で、お前の心配事だけど、大丈夫だから」

「なんで、そんなこと云えるんだよ」

ギイがここまで自信たっぷり云うんだから、きっと本当に大丈夫なんだとは思うけど。

でも、本当にさっきは結構な数の人がいたのだ。

「お前だって見てたろ?オレ、あいつら全員捕獲してから、お前等を追いかけたんだぜ。

思ってた以上に手間取ったから、見失うかと思って焦ったけどな」

章三が、ヒントとしてハンカチを残して置いてくれたんだそうだ。

で、自分はギイが姿を現した途端に、さっさとどこかへ行ってしまった。

本当に、なんだかんだと云いつつ、章三、かなりのお人好しだ。

「にしても、なぁ。お前、わかってんのか?こんな僻地に隠れるなんてな、襲ってくださいって

云ってるようなもんだろうが」

また、この惚れた欲目のカタマリな外人は!

ぼくなんかを襲う物好きなんていやしないって云ってるのに。

「信じてないな」

ま、その方が良いか。苦笑しながらギイが云う。

けどな、あいつら、見守ってるだけだったから良かったものの、お前目当てでふらふらついてきた

輩ばっかりだったんだぞ。

全く、章三にガード頼んで正解だった。でなけりゃ、見守ってるだけの奴ばかりだったとは限らない。

そんなオレの気も知らず、相も変わらずのほほんと微笑む腕の中の託生。

オレの言葉に安心したのか、身体からすとんと余分な力を抜いて、肩口に頭をことりと預けてくれた。

可愛いすぎる。

「今夜、オレの部屋に来いよ」

他に人がいないと云ったのはオレなのに、そっと囁く様に誘いの言葉を口にする。

科白は強気のウラハラに、頼むから断ってくれるなよと切に願うホンネ。

それら全てを綺麗に隠して、恋人仕様に微笑むと、うっすら目じりを紅く染め、それでもオレを

真っ直ぐ見詰めてコクリと頷く。

そんな姿が愛しくて、抱きしめずにはいられない。

そして、もう一度そっと口付けずにいられなかった。

                                                     …Fin…


・Excuse→