すべからく世はこともなし・・・<5>



そして、このお祭り最大の見せ場でもある応援合戦の幕が切って落された。

くじ引きで決まった順番にそれぞれのチームが応援合戦を披露していく。

次は、矢倉率いるC組だ。

応援団長の矢倉を含め、メインとなる5人のメンバーが深紅のマントを頭からすっぽり包んで

入場してきた。

その後ろにも同じ深紅の・・・

「鎧?だよね、あれはどう見ても」

思わず隣の章三に云うと

「なんて奴らだ。本気で派手にやる気だな」

と、矢倉を先頭にして、左右の斜め後方にギイ達3年、そのまた左右の後方に2年生が片膝を

つき並ぶ。

「ただ今から、我が”Cクラス”の応援合戦を行う!」

矢倉の掛け声と共に5人が一斉に立ち上がりマントを高く放った!

深紅のマントが晴れ渡った空に映える。

マントを脱ぎ捨てた5人は漆黒の鎧に身を包み、背後に控えた深紅の鎧の

雑兵(と云って良いのだろうか…でもそうとしか見えない)と見事なコントラストで。

「うわっ!ほんっとに派手だ」

「何を考えてるんだ、奴らは・・・」

感心しながらも呆れたように章三が呟く。


「遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よ!」


矢倉の声が周囲一帯に冴え渡る。

「先ずは、我らが好敵手の御方々のご健闘をお祈り申し上げる!」

「申し上げる!」(一同)


-----ガシャンッ!

背後の黒軍団が一斉に、片膝ついて腰を下ろす。

「エールの交換って訳か…本気で派手だな」

「けど、格好いいね」

「魅入ってるとこ悪いが、オクサマ、お宅のご主人じゃなくて、主役は大将の矢倉だが?」

「べ、べ、別に、ギイのことだけ云ってるんじゃないってば」

「僕は別にギイ、だなんて限定した覚えはないが?」

「●▲□×---!」

う。墓穴をほってしまった。

「あ、あの鎧の音、どうやってるんだろう?だって、あれ、本物じゃないよね?」

話題転換を試みた。

章三は、呆れた目つきでぼくを見ながらも、それ以上は追求はしてこなかった。

「当然だろう。あんな数の鎧、用意できる訳ないだろうが」

「第一、それなら俺達が許可してないな」

「三洲」

「わかってるよ、ぼくだって。だから、不思議なんだろ?」

「鎧そのものは、ダンボールで出来てる筈だ。音は多分、小銭」

「小銭?」

「布袋か何々入れて忍ばせてるんだろうな。で、動きにあわせてそいつを一斉に振る」

「あの人数だからな。嫌が応にも迫力がでるな」

「へえ」

素直に感心してる間に、矢倉の口上が終わり

「行くとしようぞ!!」(矢倉)

「おうっ!」(一同)

「皆の者!大将に続けえぇぇっ!」(ギイ)

「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」(一同)


ガシャガシャガシャッ!!!


そのまま、刀を掲げて退場門へ走り去っていった!

「ゴホゴホゴホッツ」

「凄まじい砂埃だな」

「全く、迷惑な奴らだ(苦笑)」

「あそこまで凝らなくても良さそうなもんだがな」

「あの人数で走ったんだから仕方がないよね」

「違うぞ、葉山」

「え?何が?」

「アレも演出の内ってことだ」

「奴らが身に付けているのはダンボール製の鎧だ。普通に走れば、あそこまで砂埃はたたないさ。

現に他のチームの時は大丈夫だったろう?」

「あ、そう云えば・・・でも、じゃあ、なんで?」

「重い鎧を着て走ってる体で少し足を引き摺りながら走ってるんだよ」

「ああ、それで」

凝り性でお祭り大好き人間が中枢にいるだけの事はある。

しかも、そんな人間が2人もとくれば、これはもう。

やっぱり、あの2人を一緒のクラスにしたのって、最大の先生方、ミスなんじゃないか?と思う。

「さて、感心している場合じゃないぞ。次は俺達が魅せる番だ」

ニヤリと某風紀委員長様と生徒会長様が顔を見合わせ、頷き合った。

あ、ここにもいるみたいだ。

静かに、でも沸々と闘志を燃やす人間が・・・。