遊奏舎 HP
受難、それとも試練?<2>
「ハイ、終わり。どいていいぞ」
声と共に身体から重みが遠ざかる。
「あ、りがとう、ございました」
ベッドの上に起き上がりお礼を云うと
「はいよ。テーピングするからな。けど、無理はするなよ。取り敢えず2週間は
動かすんじゃないぞ。大人しくしてろ」
ニッコリと笑う。
「祠堂学院だったな。あ、風呂は構わないが、2〜3日は足を上げて入った方がいいな。
ま、あそこなら温泉だしな。しかも各部屋についてるし。寝る直前に入れば、湯冷めも
しにくいだろ」
「え?」
「ん?なんだ?」
「え、と。なんだか、その。やけに詳しいって云うか・・・」
正直に思ったことを云うと
なんだ、そんなことか。と云う顔をして
「ああ、俺の母校もあそこなんだよ。つまり、俺はお前さんの大先輩って訳だ」
「あ、因みにオレも」
先ほどぼくの身体を拘束していた彼がニコニコと云う。
「って、云うかさ〜。ココにくるのって祠堂出身者多いっすよね」
「あ?まぁな」
かく云うぼくも校医の中山先生に紹介されてココに来た。
「因みに校医の中山な。アレは俺の元ルームメイトだ」
「えーーー!そうなんですか?」
彼と2人思わずユニゾンで声を上げる。だって、中山先生よりずっと若く見える。
けど、ルームメイトってことは原則的に彼らは同級生な訳で・・・。
「あ?なんだ?2人共。俺、何かおかしなことでも云ったか?」
「えー、だってなぁ」
「ですよねぇ」
恐らく、目の前の彼もぼくと同じことを思ったのだろう。
思わず顔を見合わせる。
「元ルームメイトってことは、同級生ってことっすよね?」
あ、勇気あるなぁ。この人。
「おお、なんでだ?」
「見えないっすよ、全然。コーイじゃないや、中山先生より全然若い感じっすよね」
「そうかぁ?ま。アイツも気苦労が堪えんらしいからな。早く老けるんだろ。誰かさん
達が、なんやかやと問題持ち込むからじゃねぇ〜のか?・・・にしても、アイツ”コーイ”って
呼ばれてんのか」
「あ、オレらの時は、そうでしたね」
今は?と促され
「特には、ないと思いますけど」
「じゃ、ま。定番で呼び捨てってとこか」
「はぁ、まぁ」
口籠ると、気にするな、いつの時代も”呼び捨て”で呼ばれるのは教師の宿命だろ、
とカラリと笑う。
そのまま、3人で祠堂話でもりあがっていると・・・
コンコンコッ
扉がノックされ、ゆっくり扉が開く。