不遜なぼく等・・・<1>
「時々さ、ぼくは一体何を見てたんだろうって思うんだ。」
「ん?」
急に何を云い出したんだと云わんばかりに章三がぼくを覗き込む。
「勝手にイメージって云うか、印象って云うか、そういうのだけで、関わろうともしないでおいて、
そのくせ苦手意識とか持っちゃって、こう色眼鏡ってほどじゃないけど、そのつもりなんだけど、
なんかそういう感じっていうか・・・」
「ああ、何となく、解る様な気がする」
例えば・・・
当初、大柄で、迫力もあって出来ればぼくとしてはお近付きになりたくないタイプだった
駒沢瑛二が、実はとてもロマンチストで心優しい人だと知った。
憮然として見えるのも、本当はどう応えればいいのかと熟慮しているからで・・・要するに、
ちょっと不器用なだけなんだよね。
それを知った今となっては、日頃、ギイや章三に不器用だなんだと云われるばかりのぼくとしては、
駒沢としたらそれは一寸違うと云われるかもしれないけれど、妙な親近感というか、
同類感すら持ってしまっていたりもする。
でも、それも本当は駒沢瑛二という人が、どういう人となりをしているのかを、
知る機会があったからで。
そうでなかったら、きっとぼくは今も彼を”おっかなそうだな”と避けるばかりだったろうと思う。
「赤池君にしても、さ」
「僕?」
「そう。初めは、もっと融通とか利かない厳しい人だと思ってたんだよね」
「お言葉だがな、葉山。僕も出来れば利かせたくない”融通”もあるんだがね」
心当たりがしっかりとあるぼくとしては苦笑いするしかない訳で。
「いつも、お世話になっています」
ついでにペコリと頭も下げる。
「はいはい、お世話しております、誠に不本意ながら」
ジロリと見る。わ、目が合った!
慌てて目を伏せた、途端。
「おい、失礼な奴だな。そんなにあからさまに視線を逸らす事もないだろうに・・・。
けど、葉山。さっきの話」
「さっき?」
「そ。葉山がいってた自分が勝手に抱いてたイメージと実際のところの違い。・・・と、それに
伴う後悔というか、反省、かな。それは僕もあるよ」