遊奏舎 HP
キミだけが、ぼくのトクベツ<1>
うわっ。
歩いていたら、急にふわっと視界が暗くなった。
「だ〜れだ?」
と、同時にどこか嬉しそうな声。
この声は・・・。
聞き違える訳ない。
祠堂随一と呼び声高い放送部長の
「伸之」
「・・・アタリ」
「あのね〜、なんなんだよ、全く・・・」
「アッサリ当てられたな〜。って、葉山、もしかして怒ってる?」
「だってね。今日だけで6人目」
「今日だけって?」
「昨日は全部で4人、その前は2人、かな」
「日に日に人数が増えてってるって訳か」
ふむふむと、訳知り顔で伸之が呟くと
「なに?平沢まで参加してるのか?」
みんな、よっぽど暇なのか?と伸之の背後から現れたぼくのクラスメイトでもある
鬼の風紀委員長様、赤池章三が呆れ顔で嗜めるように云う。
伸之も流石に少しバツが悪そうに
「あー。だってさ。普段だったら俺もこういうのは放っとくっていうか、
気にならないんだけどな。葉山だし」
「まぁなぁ。解らなくはないが」
え?なんで?そこで納得顔なんだよ。
「だろ?」
訳が解らないぼくを無視して、二人の会話は続いていく。
「ま、その内、収まるって」
気楽に伸之が云えば
「だな。ただなぁ。このままだと、誰かさんが超低気圧になること、必至だからな。
と、いうか、既に手遅れかもしれないけどな」
ああ、ナルホドと合点して、2人の視線がぼくに流れる。気の毒そうに。
なに?なんで?だけど、何だかすごく嫌な予感がするのは気のせいか?
と、突然、また視界が真っ暗になる。
で、お決まりの
「だーれだっ、託生」
「利久っっ!もう、止めろよ!!ビックリするだろ!!!」
思わず声が荒れるのも仕方がないと思う。
「ざ〜んねんでした!」
え?なんで?だって、この声。
しかも、”託生”って呼ぶのは、祠堂ではギイと利久だけなはず。
そう思いながら振り返ると、申し訳なさそうに苦笑を浮かべながら、そこに岩下政史。
そして、その背後から長身に満面の笑みを浮かべたぼくの親友、片倉利久。
「へへへ〜。考えただろ。な、な」
得意満面、まるで小さな子供みたいに無邪気に云う。
「ご、ごめんね。葉山くん」
気の毒そうにぼくを見て岩下が謝る。
「や、その。岩下君はいいけど・・・」
「なんだよ、託生。その岩下はっていうのは。じゃあ、何か?岩下は良くて俺はダメって
ことみたいじゃん」
「みたいじゃなくて、そうなんだよ!」
当然だろ、と続けると
「えーーーーー!」
不満げに唇を尖らせて不平の声。
「だって、どうせ岩下くん巻き込んだの利久だろ」
「違うぜ。コレ、考えたの岩下なんだぜ」
え?そうなの?
思わず岩下を見ると
「や、だって。まさか片倉君が本当にするとは思ってなかったし」
にしても。
「大体さ、なんだって、急にみんな、ぼくにこんなことするんだよ」
「え?託生、知らないのかぁ?って、そうだ。託生、噂に疎いんだった