遊奏舎 HP

 

すべからく世はこともなし・・・<1>



「じゃあ、ここに参加種目を張り出しとくから、希望種目の所に名前を書いて

いっておいてくれよ。極力、希望優先で決めるけど、競争率の激しいのと、代表リレーは、

まぁ、おいおい、な。と、こんなもんかな、副将」

「いんじゃない?初回の説明会としては」

「だよな。じゃなくて、お前ね、コレ決起集会、だろうが!・・・あ〜、1年生諸君!初めてのこと

だらけで戸惑いも多いかと思うが・・・優勝は俺達C組が貰う!」

夏休みが開けて早々に、直ぐに開かれる『文化祭』と引き続いて行われる『体育祭』に向けて、

連日、集会だとか説明会だとかが続いていて、なんだか、学校全体が浮き足立っていた。

先に土曜・日曜の2日間を使って行われる各クラス対抗の様相もある『文化祭』と

1〜3年までを縦割りにした『体育祭』。

文化祭は、クラス対抗だけあって、中心となるのは運営委員を除けば級長や副級長で

あるのに対して、体育祭は最上級生である3年生の運動部の有志で、でも、ぼくにとっては、

そのどちらも全くもって関心を持つ事はできないものだった。





当たり障りの無い種目、選ばないと。

ぼくは決して運動向きとはいえないから、参加しなくてもよいものなら、そうしたいくらいなのだけれど、

全員参加が原則ということでは、そうもいかず。

しかも、ぼくとしては、出来る限り人と接触しそうな事態は避けたい事情もあって。

うん、やっぱりコレにしよう。

「た〜くみ〜。どれにした?って、なんで”走り幅跳び”なんだ?」

「いいだろ、なんでも」

「そりゃ、そうだけど。目立たないじゃん」

だからだろ。

しかも、得点にあまり影響を与えない。

得点競技ではあっても、そんなに体勢を影響を与えるほどのものじゃない。

「隅っこの方で、他の競技してる傍らで結構な長い時間掛かるって説明あったじゃんか」

「わかってるよ」

「だから、この競技は陸上部の奴らが多いだろうって」

「わかってる、人のことより、利久、決めた?」

「うー。まだ、悩んでるんだよな。けど、どれに出ても、結構プレッシャー」

「プレッシャー?」

「そうなんだよ。部活の先輩とかから厳命が出ててさぁ。運動部以外の奴に負けたら、

鬼トレやるってさー」

「色々、大変なんだ。さすがに運動部だね」

「けどなー。運動部じゃなくても、脚の速い奴って多いじゃんかー」

「ま、せいぜい悩んでくれたまえ、利久くん」

「ヒトゴトだと思ってるだろ〜」

「ヒトゴトだからね」

「一緒に悩んでくれよ〜」

「やだよ。それに、そういうことなら、同じ弓道部の1年同士で悩めば?」

そんなことを言い合いながら、張り出された希望一覧表の前を後にした。