名前を呼んで・・・
〜Name is called〜<1>
悲鳴にも似た矢倉の声と重なるように衝撃を感じた。
と同時に視界が真っ白にスパークした・・・。
”・・・Uu・・・n・・・”
「お、気付いたか、ギイ」
”・・・ここは?何があった・・・痛っ!・・・”
口の中だけでで呟きながら起き上がろうとした途端、目がくらみ頭部を鋭い痛みが襲い
思わずこめかみを押さえる。
「無理するな、ギイ」
ぎい?って誰だ?それ。
しかも、日本・・・語?
横になったまま改めて見回すとオレはベッドに、それも随分と質素な、スプリングもまともに
利いていないようなベッドに寝ているようだった。
周囲には・・・東洋人ばかりだ。
日本人か?そういえば、先程から聞こえてくるのは日本語ばかりだった。
そんなことを思いながら一人一人を見やる。
一番近く、頭の横にいるのは、几帳面そうなシャキッとした感じの高校生、くらいか?の男。「おい、ギイ。大丈夫か?」
「気分、悪くないか?吐き気は?」
取り敢えず、周囲にあわせて日本語で返すべきか。
混乱しつつも、どこか遠くの出来事のようで現実感が今ひとつない。
そう思いつつも、一番気になった事を尋ねた。
「・・・ギイって、オレのこと、です、か?ところで、ここは、どこなんです、か?」
「おまっ!この状況でお前、それはシャレになんないぜ!?って、おい、マジかよッ」
「マジって、なに?え?なに?――――オレはっ!?」
「ああ、まぁ、恐らくは多少、記憶が混乱してるだけだろうってことだけどな」
「このタイミングは、どう取るべきなんだろうなぁ。何の用だか知らないけど、2週間、だっけ?
で、いつ帰ってくるんだ?」
「ああ。かれこれ三分の二は済んだ筈だから、残りは・・・っと今週末だな。
ここへ戻ってくるのは・・・。なんでも、師事していた先生のところで集中レッスンを
受けられることになったとかでな」
「と、なると・・・下手に知らせない方が無難だな」
「だなぁ。知っちまったら、気になってレッスンに集中なんてできないだろうしなぁ」
それでなくとも、感情のコントロールという面において不器用なのに。
「で、こっちはどうする?」
「下手に表に出すわけにはいかないだろうな。格好の餌食になるだろうしな」
全く、面倒な事になったとばかりに息を吐き、三洲が云う。
「餌食?」
「あのメンド〜な1年坊主共があっという間に、恩の一つも売ろうと群がるだろうさ」
「ああ、なるほどねぇ。ありそうだよねぇ。それは、マズイよねぇ」
少しもマズイと思っていなさそうな口調で、のほほんと野沢が応える。
「と、なると・・・」