独りで寂しくなんてならないで・・・<4>



託生は強い。

その強さが真っ直ぐに、自分を追い詰めていく。

けどな、そんな強さ。

本当は持っていて貰いたくなんてないんだ。

持っている必要なんて無い強さだ。

人は、成長するにつれて、『逃げる』という事を意識的にせよ、無意識的にせよ学ぶ。

そうしなくては、生きていくには余りにも辛い。

だが、託生は。

恐らく、きっと。

学ばなかったのではなく、学べなかったのだとオレは思う。

学ぶ機会を得ることが出来なかったのだ。

幼少期から、与えられるべき両親からの愛情は託生には与えらず、

兄、尚人に注がれた。

そして、兄、尚人は・・・託生の唯一の理解者であり保護者だった。

確かに、”兄”からの愛情は、例え、それが後に歪んでしまったものだったとしても、

少なくとも。

託生が幼かった頃には紛れも無く託生にとって掛替えの無い家族からの愛情で

あっただろう。

けれど。

それは、親からの愛情とは異なるものだ。似て非なるもの。

そもそも本来、例え年が離れていようとも、兄弟とはどこか”ライバル”でもあり・・・。

尊敬できる兄であるならば、そうであるほど、追いつきたい、追いつこうと憧れ

目標にもなるだろう。

だが、託生の場合は、兄である尚人が、唯一の拠り所となってしまったが為に、

また、兄自身も保護者として振舞ったが故に、追いつく対象ではなく、

そう、託生にと小さな子供にとっての親のように、”逆らってはならない存在”と

なったしまったのだと、オレは思う。

そして、尚人はそんな託生を”護る”ことで、雁字搦めに絡めとっていったのだ。

そうして、託生は”逃げる”というlことを学ぶこと無く成長し、突然、そのガーディアンの

腕(かいな)から放り出された時に、自分で自分を檻に閉じ込め外界と遮断することで、

自分の心を守ったのだろう。