遊奏舎 HP
独りで寂しくなんてならないで・・・<Fin>
「ギイ、ごめんね」
「何が?」
明るく返す。本当にあんなことくらい何でもないことだと思ってるから。
「みんなの前であんな」
「ん?ホントの話だぜ。あいつら勝手に羨ましがってるがな、実際になってみろって。
面倒くさいもんなんだって。一度な、ガツンと云ってやりたいって思ってたんだ」
良い機会になったとカラリと笑って云う。
「でも、だって」
「ほら、また出た。託生のだって攻撃」
「だって、さ」
「だってしか云えないお口は、こうしてやる!」
「ちょっ、ぎっ!・・・んっ」
いつの間にかガッチリ顎を掴まれ上向かされて、でもその強引な腕の力とは程遠く、
優しくしっとり口付けられて、抗うことなんて、できなくなった。
そのまま、さらに深く口付けられて。
託生、謝らなくていいんだ。お前が謝るようなことじゃない。
確かにオレは、極力自分のバックボーンを悟られないよう振舞っている。
けどな、お前以上に大切なものなんて無いから。
オレのバックボーンのほんの一部を切り売りしたところで、それでお前が自分を追い詰めることを
止められるのなら安いものだ。
なあ、託生。
オレはお前を守りたい。
何からだって守ってみせる。
それは確かにオレの中に在る想い。
誓いといっても過言じゃない。
けどな、お前自身からお前を守るということは、至難の業で。
認めたくは無いが、恐らく完全には、という意味ならば、それだけは、オレにも出来ないことで。
せめて。
お前がお前自身を追い詰めてしまうことがないように。
痛みも瑕(キズ)も、ひっくるめて”葉山託生”だから。
それら全てを内包したお前をオレは愛しているから・・・。
せめて。
少しでもお前がお前を責めることの無いように。
追い詰めてしまうことの無いように。
せめて。
少しでもそれを防ぐことが出来るように、オレが出来ることがあるならば、
何だってしたいと思うから。
だから、どうか・・・。
託生、お前はお前で在れば好い。
お前がお前でいてくれる、それこそがオレの願い。
その為ならば、オレは何にだってなれるから。
どうか、託生。
独りで寂しくなんて、ならないでくれ。
いつだって、オレがお前の傍らにいることを、どうか忘れないで。
「愛してる」
願いを込めて、誓いのキスを・・・
…Fin…
・Excuse→